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24歳サラリーマンが、挑戦を続ける人たちの『イケてる』人生を掘り下げ、伝える、インタビューブログです。

-プロボクサー・城後響-



-プロボクサー・城後 響-

ボクシングだけで満足に食べていけるのは世界チャンピオン、またはそれに近いごく一部の選手だけです。日本チャンピオンでもファイトマネーは1試合につき100万円ほどと言われています。トランクスのワッペンを出してくれるスポンサーからの広告費など、ほかの収入源があっても、1年試合数ですから、決して多いわけではありません。


城後 響(じょうごひびき)/1993年生まれ/プロボクサー。高校3年でキックボクシングに出会い、大学からボクシングに転向。日本ランカー入りを目指す。戦績は7勝2敗。/全2回連載


そんな世界で今ぼくは日本ランキングにも入っていません。「大変ですね」「ツライですね」と思う人がいるかもしれないけど、全くそんなことはない。心から好きでハマったのがボクシングですから。たしかに収入は一般企業で働く同世代よりも少ないと思うけど、〝本当にやりたいこと〟をやっている。自分で言うのは恐縮ですが、生きがいを感じ、日々生活できている。すごく幸せを感じています。






-〝地下格闘技のしょぼい版〟-

高校時代に友人の誘いでキックボクシングジムに通い始めたのが格闘技との出会いです。小学生から続けてきた野球を引退して「身体を動かしたいなあ」と思っていた時期で、もともと格闘技を見るのが好きだったこともあり興味本位で行ってみた。すると、めちゃくちゃ楽しかったんです。


近畿大学に進み、バイトメインの生活のなかでキックボクシングジムに週3日のペースで通っていました。身体を動かすという趣味程度で始めたことが日に日に楽しくなってきた時、ジム長から「試合出てみいひんか?」と言われ、〝地下格闘技のしょぼい版〟みたいなリングに上がりました(笑)。軽い気持ちで出たので当然、負けてしまったけど、なんとも言えない楽しさを感じたんです。それからは本格的に練習し、2試合目で初勝利。完全にハマりましたね。


当時大学1年の秋。ちょうどその頃、過去の不祥事で廃部になっていた近大ボクシング部が復活したんです。キックボクシングをかじっていたから当然のように興味を持ち、体験練習に参加。そこで、ボクシングを始めるきっかけとなる、衝撃的な体験をします。当時の監督と手合わせしたら一切、自分のパンチが当たらなかった。キックボクシング経験者として持っていた自信をへし折られたと同時に、「ここに入って、この人をしばけるくらい強くなりたい」と思いました。すぐにキックボクシングジムを辞め、ボクシング部へ正式入部しました。






-「どこまでやれるか確かめたい」-

「自分よりも先に、
ボクシングを始めた奴に勝ちたい」。

大学時代のモチベーションです。近畿大学のボクシング部は古豪だったこともあり、復活した時にはメディアに大きく取り上げられました。それが小さい頃からボクシングをやってる人にとっては、「強くもないのにチヤホヤされやがって」と思ったようです。嫉妬や反感が生まれたと同時に、ナメられました。それは実際に対戦してすごく感じた。だからこそ、経歴では負けているけど実力で勝ちたい。「そういうやつらを倒したい」という思いでやっていて、通算13勝4敗の成績を残しました。

当時はプロになろうとは考えていませんでした。目の前の試合に勝つ。そのために練習をする。そんな日々が楽しくて、夢中でした。ただ、3年になった時、元世界チャンピオンの名城 信男さんがコーチに就任したことで人生が大きく変わります。プロの話を聞いたり、プロ選手とスパーリングをさせてもらったことで、「プロの世界で自分がどこまでやれるか確かめたい」と強く思ったんです。4年の6月に引退。8月1日から井岡ジムに所属し、9月からプロボクサーとしての人生が始まりました。






-俺がメイン-

プロでの戦績は9戦して『7勝2敗』です。この時点で2回も負けていてはダメで本当に強い選手は無敗でチャンピオンまで駆け上がります。とはいえ、モチベーションが下がることはありません。それは、友達が応援してくれるなかで試合をするという、最高の瞬間を味わえるから。ボクシングには試合の順番があって、メインイベントやセミファイナルなどの注目試合が一番盛り上がるんですけど、僕を見に来てくれる人にとっては、僕の試合がメインイベントです。そうやって、応援してくれる人たちが見ているリングで戦えるのが何よりの生きがいですね。

プロボクサーになって感じているのは〝人と同じことをやっても楽しくない〟ということ。地元でボクサーは僕だけだから、すごく注目してくれるんです。「次試合いつなん?」とか、「体重どうやって落としてるん?」とか、色んな話題をくれる。人と違うことをやっているから興味を持ってくれる。これは、すごく大きなモチベーションになっています。思えば大学時代、ボクシング部が復活した時にメディアがたくさん来てくれて、キャプテンだった僕は多くの取材を受けました。それまでの人生で、他人に注目された経験がなかったからものスゴく嬉しかったし、それがボクサー人生のスタートだったから、今でも熱意を持って続けることができています。


今年中の日本ランキング入りを目標にしていましたが4月の試合で負けてしまい、達成できるかは分かりません。12月16日に今年最後の試合があるので、今はそこに向けて全力で練習しています。昼間に飲食店でバイトして夕方から練習。休みはほとんどありませんが、辛いとか、苦しいと思うことはありません。自分が好きで選んだ道ですから。

ー第2回につづくー


取材・編集:巻木 周平(マキギ)