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24歳サラリーマンが、挑戦を続ける人たちの『イケてる』人生を掘り下げ、伝える、インタビューブログです。

-テキスタイルコンバーター・三川直樹-


-テキスタイルコンバーター・三川直樹-

『株式会社ポーン』でテキスタイルコンバーターとして働いています。馴染みのない職業だと思うのでまずは紹介から。テキスタイルコンバーターとは服地製造業のことを言い、服地の生産工場とアパレルメーカーの間に入る、別注生地問屋のことでもあります。国内外の工場と密にお付き合いし、アパレルメーカーやデザイナーから受けた要望を生地として具現化して、納品するまでが主な仕事です。


三川直樹(みかわなおき)/1993年生まれ/「株式会社ポーン」所属。少年時代から好きだったファッション業界へ進む。生地生産の企画から納品までを担当する「テキスタイルコンバーター」/全2回連載



-天職-

僕の場合、生産は国内工場100%。京都、新潟、秋田など、各地方にある染色工場に、アパレルメーカー・デザイナーからの要望を企画として詰めて、依頼する。それで終わりではなく、コストの選定や納期の管理、トラブルシューティングまで、リスクを全て自分で背負い、モノを納めていきます。企画の立ち上がりから生地をお客様に納めるまでが、僕の役割です。


ときには実験的に予算内で試作し、デザイナーにプレゼンすることもあります。自社(ポーン)が100年前のヴィンテージの生地資料を所有しており、それをもとに提案することが多いですね。開発した生地は縫製工場で洋服となり、その後、国内外問わず、実店舗に並びます。


生産に関わった洋服を、街中の人やテレビでタレントが着ているのを見た時に、これ以上ない喜びとやりがいを感じます。「誰かの為になっているんだな」と。実績を重ねるごとにそういった機会は少しずつ増えてきています。また、デザイナーさんから「コレクションにプリントがあって良かったよ」と言ってもらった時は、最高ですよ。

最も大事なことは、「引き出しの数」です。デザイナーが作りたいモノを具現化するためには、何より、知識と経験が必要。イメージを実現するための素材、プリントの技法など、覚えることがたくさんあります。やってみないと分からないことも多いので、とにかくトライしながら覚えていく。スケジュールに余裕がないことも多いため、決断の早さも求められます。


繊維の専門商社と違い在庫は持たず、バイオーダー(完全別注型)にて生地をつくります。素材、柄、コストも自ら選定するため圧倒的に裁量権があり、ものづくりに深く関わることができる。僕にとってはまさに天職です。トラブルも日常茶飯事ですが、それさえも楽しめるぐらい、やりがいを感じています。もともと飽き性で、ルーティンワークが苦手な性格でした。だから、0から創り上げていくこの仕事のスタイルが、自分には合っているのだと思いますね。



-唯一無二の存在に-

欧州でテキスタイルコンバーターを志す最高にクールな友人もいますが、僕は日本でやり続けようと、いまは考えています。世界中、どの繊維産地を見ても、生地づくりに最も長けた国は日本だと思うから。北陸の合繊、西脇の先染め織物、尾州の毛織物、和歌山の丸編み、児島のデニム。様々な種類の生地をつくる生産背景があります。どの分野にも万能な生地屋として、日本の各産地、また、世界で勝負しようとしているデザイナーの力になりたい。

この仕事は、「自分が商材であり、付加価値である」と考えています。感性やセンスの良さはもちろん必要。あとは、いかに豊富な知識と多才な人脈を持ち、沢山失敗して引き出しを持っているか。代わりのいない存在にならないと、この先のテキスタイル業界で必要とされません。逆に、誰かの唯一無二の存在になればそれが最大の武器となり、国内外問わず、活躍できます。


そのために、20代のうちは自己投資を惜しまず、チャンスと仕事は全て獲るつもりです。と同時に、人との繋がりを作っていく。この業界はタテヨコのつながりが本当に大切ですから。そして、将来的にはベクトルの方向が同じ同世代と、一緒に面白いことをしたいと考えています。高齢化が進んでいる業界ですし、若い世代にはチャンスが溢れています。



-産地の学校-

自己投資の一環として、17年5月から「産地の学校」に通っています。現職ではプリントがメインですが、近い将来、他分野の生地開発に携わるつもりなので、そのノウハウを習得するためです。同年11月からは「産地の学校 ラボ」という、より実践的なプロジェクトがメインのコースに所属しています。


現在、学校を通して出会った遠州のある機屋さんでモールスキンを試作していたりと、あくまでも、ポーンでの仕事とは完全に切り離して取り組んでいます。また、月に1度は他のメンバーと繊維産地を訪れ、新たな生産背景の開拓と、知識の深耕に注力しています。

繊維産地の人手不足は深刻です。賃金は安く、若い世代がなかなか産地へ入らない。外国人を雇う工場もあるけど、一定期間が経つと自国へ帰るのが一般的です。かつ、職人さんの高齢化が進み、後継者育成も重要課題です。ただ、僕の知る限り、各産地や東京には、この現状を打破しようと取り組まれている人たちが数多くいます。僕もその人たちに負けないよう、微力ながらできることをやっていきたい。


僕にできるのは、仕事を継続的に依頼すること。単発で大きな仕事を入れることも必要ですが、難しい仕事とそうでない仕事のバランスだったり。職人さんを急かすと、やっぱり良いモノはできません。信頼関係がなによりも大切。生産を依頼する工場さんも自ら選ぶので、デザイナーと打ち合わせをするときは、工場の「営業担当」であることを意識して話すようにしています。1つでも多くの仕事を継続的に依頼することが、産地のため、工場の為になると自負しています。


ー第2回につづくー

取材・編集:巻木 周平(マキギ)